真夜中談義|かもかてSS

前提
◎ヴァイル・タナッセとも友情前提

中庭で歌ってんの誰だよ!!!(((´Д`)))のお話。
お泊り中のヴァイルとぺちゃぺちゃお喋りしてます。
捏造激しいです。ご注意を。

「でさー、忍び込んでみたらもう無くなってんの。運ばれてきた時から楽しみにしてたのにもう肩透かしも良いトコ」
「もう別の場所に運ばれちゃったんじゃないの?だっていつもヴァイルちょろまかしてるじゃない」

高い声での喋り声が響くのはヴァイルの居室、正しくは寝所だ。
広々とした寝台には、背格好も似通った毛布の塊が二つ。
くすくすと笑い声が漏れたかと思えば、塊がごろごろと転がる。

「あー、やっぱりヴァイルの部屋にして正解だった。広いね、寝台」
「そう?レハトんトコ狭いの?」
「狭くはないけど、転がれる程じゃないかなー」

言いながら、レハトが寝台を横断するように転がってみせた。
2回転半はいけるね、と真顔で告げるレハトにヴァイルが思わず噴出す。
ヴァイル付きの侍従が就寝前の準備を行ないながら咳払いを一つ。
肩を竦めてみせるものの、直ぐにまたキャイキャイと笑い声が響いた。
やがて就寝準備を整え終わった侍従が明かりを消し、寝所を出る。
しかし笑い交じりの話し声は未だ収まる気配は無かった。

「そうそう、聞いてみたかったんだけどね」

枕元に残された角灯の明かりで影絵を作りながら、レハトが言う。
天井にゆらゆらと揺れるのは、レハトの両手で作られた鳥の影。
ヴァイルが毛布から頭だけ出してレハトの作る影絵を見ている。

「いつも中庭で歌ってる子居るじゃない。あれ誰なのかな」
「誰って、誰それ」
「え?中日にさ、中庭でいつも歌ってる子居るよね?」

天井に揺れていた鳥の影が、ヴァイルの作った狼の影に食べられる。
観念した鳥は、レハトの両手の影に戻った。

「いや、俺見た事無いけど…誰か貴族の子どもなのかな。男?女?」
「んー…僕も声しか聞いた事無くて、女、なのかな。高い声」

狼の影がパクパクと口だけ動かす。
窓枠が風を受けて音を鳴らすと角灯の炎が揺れ、ぐらりと狼が大きくなった。

「でも子どもなんて居たっけなあ。
俺も全員顔知ってる訳じゃ無いし、たまたま連れてきてるってのはあるかも知れないけど」
「聞こえるのは同じ声だから、同じ子だと思うんだよね。で、いつも王様の歌を歌ってる」
「いつも中庭なの」
「中庭…なんだけど、広いじゃない、中庭。でも、何だろう…ちょっとずつ、場所は移動してるって言うか…」

天井に揺れていた狼の影がヴァイルの両手に戻る。

「…レハト、それホントに子ども…?」
「え、え、何で。侍従の子かも知れないでしょ?同い年位なら顔位見せてくれても良いのにって…」
「侍従で子ども連れてくるなんて、伯母さんか俺かタナッセか、そん位の部屋付きじゃないと無いよ。
それに、そんなの俺聞いてない」
「…じゃあ、侍従とか…」
「中庭で歌ってるだけの侍従なんて居ないよ!」

再び風が窓枠を揺らし、ヴァイルとレハトの肩がびくりと震える。

「…場所、移動してんだっけ?」
「…うん。始めは…中庭の結構奥からだったと思うんだけど…最近は…こう…建物に近付いてる、みたいな…?」

唐突に寝所の扉が開けられ、寵愛者二人の悲鳴が響いた。

「…なんだ、その悲鳴は」

急いで毛布に包まった二人を見て、タナッセが溜息交じりで呟く。
ヴァイルがごそりと毛布から顔だけ出し、タナッセの顔を見て深く息を吐いた。

「それこっちの台詞だよ、何なのタナッセ…」
「…お前達が余りに煩くしては敵わないと、母上から目付けを言い渡された。まったく…迷惑極まりない」

レハトがつられて顔を出すと、タナッセが鼻を鳴らした。

「寝所の外まで聞こえていたぞ、お前達の馬鹿話は」
「馬鹿話じゃないよ…今、今すんごい怖いトコだったんだから…」

タナッセはつかつかと寝所に入り込み、椅子にどかりと腰掛ける。
持っていた角灯を机の上へ置くと本を広げた。
訝しげに毛布から顔を覗かせている二人に気付き、手を払った。

「さっさと寝ろ。でなくては私が部屋に戻れないだろう。余計な手間を掛けさせるな」
「何、タナッセ寝ないの」
「…まさかお前達と一緒に仲良くなどと抜かすのでは無いだろうな。冗談にもならん。
大体だな、王位継承者が揃いも揃ってこのような我侭を通す事自体」
「あー、良いよもう黙ってて。寝る寝る」

長くなりそうな演説を途中で遮り、ヴァイルが乱れた寝台の上を整える。
ほら、と促され、レハトも空いた場所へ大人しく横たわった。

先刻よりも明かりが増えた分、余計に部屋の四方の暗さが際立つ。
風が強くなり、窓枠の揺れる音がみしみしと響いた。
わずかな隙間を通り抜ける風が、時折高い音を立てる。
まるで、子どもの声のように。

─の、おうさま

始めにぎくりと肩を震わせたのはヴァイルだった。
つられてレハトが目を開ける。

「な、何?」
「…ううん、多分…空耳…」
「寝ろ」

タナッセに言い捨てられ、渋々と寝返りを打つ。
レハトがあんな話をするから、と目を瞑ると、

─お顔も姿も消えちゃった

がばりとヴァイルが飛び起きた。

「な、何か…歌、聞こえたんだけど」
「え、ちょっと止めてよ…!」
「だってレハトがあんな話するから!」
「聞こえるのって、だって中日だけだよ!しかも昼間!今は夜だよ、真夜中!」

二人して起き出し、途端に騒ぎ始めた寵愛者を見たタナッセの眉間に皺が寄る。

「何だ、歌がどうの。大方風の音だろう。それとも夢と現も分別出来ない程に暢気に出来た頭か」
「タ、タナッセ聞こえなかったの?」
「何も聞こえん。お前達の耳障りな声以外はな」

手に手を取って震えている二人を見兼ねてタナッセが立ち上がった時、寝所の扉を僅かに叩くような音がした。
びくりとヴァイルとレハトが顔を見合わせる。
既に泣きそうな顔である。

「…今度は何だ」

いい加減あきれ果てたような声でタナッセが言う。
ヴァイルが半ば涙声になりつつ、寝所の扉を指差した。

「…今、何かが扉叩いた…」

タナッセが扉を振り向けども、別段変わった様子も無い、只の扉だ。
開いた形跡も無く、タナッセが閉じたきり動いた気配も無い。

「誰が叩くんだ、こんな真夜中」

タナッセの言葉の途中、再び扉が叩かれた。
今度ばかりはタナッセにも聞こえたのか、言葉を詰まらせ扉を見やる。

「…タナッセ、見てきて…」
「ば、お前何を言い出すのかと思えば」
「だってタナッセ一番年上だろ!俺らまだ未分化だし、成人前だし!」
「未分化だの成人前だの、一切関係無いだろう!」
「やだよ!怖いもん!何が居るか分からないもん!」
「私なら良いのか!何が居るのか分からなくても構わんのか!」

ぐいぐいと互いを押すようにしている従兄弟を見やり、レハトが寝台から降りる。

「…え、レハト?まさか」

足音を忍ばせ、扉前に近付く。
扉に耳をあてるものの、他に音はしないらしい。

「い、良いよレハト!ごめん悪かった、何の音もしてないって!」

レハトと目があったヴァイルが、こっちに戻れとぶんぶんと手招きをしている。

把手に指をかけ、勢い良く扉を開ける。

扉の向こうには、

髪を振り乱し
衣服は既に泥に塗れ
肌は土気色に爛れた少女らしき物体が這いつくばって

居る訳もなく、ただただでかい衛士が一人。

「………モル」

心底、気の抜けたような声を出したのはタナッセである。
ヴァイルが寝台の上でへたりと崩れ落ちた。
室内の騒ぎに気を揉んだ優秀且つ寡黙な衛士のノックは
その真意までは主達には届かなかったらしい。

「…何でもない。下がって良い」

額に手をあて俯いたタナッセが呟くと、一礼をして再び扉の向こうに消えていった。

「…寝よう。何かもう、今日ダメだ」

ヴァイルが毛布に包まり、ぼすんと横になる。
手だけ出して、ひらひらとレハトを手招きしている。

それならば、と戻りかけたレハトの視界の脇を過ぎったのは
さて、柔らかくうねる覆い布であったか、細い髪の毛であったか。

翌々日辺りでタナッセが中庭の歌を聞いてgkbrするのは、多分また別の話。
レハトの中の人は、憎悪より何よりあの中庭の歌が怖くて堪らないんですが、
皆さん意外とそうでもないんでしょうか…。うう…ぶるぶる。