石室|かもかてSS

前提
ヴァイル憎悪ED。その後のお話。ヴァイルとレハトしか居ないよ!
※憎悪モノなのでドス黒いです。
「食事、持ってきたよ」

言いながら、部屋を覗き込むものの、朝食に用意をしたものがそのままの状態になっている。
思わず溜息が出る。

「…また食べてないの。反抗のつもり?」

寝台がごそりと揺れ、彼女が顔を出す。
成人前の快活な風貌は、こんな塔の一角に封じられ尚色褪せない。
しかし目を合うか否かで、彼女の視線は逸れてしまう。

「別に嫌いなものをわざわざ持って来てはいないつもりなんだけど。
ああ、この間作らせた衣裳が気に入らなかった?
でももう女分化しちゃったんだし、これまでみたいな服は」

言葉は、食器が落とされた音に阻まれた。

「誰のせいで女になったと思ってる、よく言えるもんだよね」

未だ息も荒いままの彼女とようやく目が合う。
何だ。まだ充分元気じゃないか。

「そう、よく言えるもんだよね」

彼女の言葉をそのままに返す。
成人をして、同じ位だった身長にも随分と差が出た。
立ち並べば彼女の目線は遥かに下だ。

「そうして癇癪を起こせば、誰かが助けてくれると思ってんの?」

彼女の瞳に、明確に映る憎悪の光。
けれどもうそれすら、どちらから発せられているのかすら分からない。
己の瞳に宿る憎悪が彼女に移ったのか。
それとも彼女の瞳から、ただただ溢れ出ているのか。

「そうそう、懐かしい物を見付けてね」

散らばった食器をテーブルに戻しながら、懐から布に包まれた物を取り出す。
それは、もう殆ど手入れなどされず錆びるに任せた、仕込み短剣。

「覚えてるよね?」

彼女の目の色が変わるのが分かる。

「それ…どこから…!」
「部屋にあったんだよ、まだ持ってたんだ」

抜こうとすると、軋むような音が響いた。
それでも錆びていたのは柄の近くだけで、刀身は未だ光を反射する。
今見れば、短剣と言うよりも只の玩具にしか見えない。
それでもこれは、二人を繋ぐ為に必要なものだった。

僕と、ヴァイルを。

「…何故、殺さない」

こんな状況でも、彼女の気丈さは未分化の頃から変わる事が無い。
その姿を愛しいと思うのか、憎いと思うのか、もう分からない。

屈み、彼女と視線を合わせる。
ああ、この額の印。
まるで背格好も同じだったあの頃。
いっそ血が繋がっていたなら、こんな感情を抱く事も無かったのだろうか。

「望みどおりに死ねるなんて、思ってるの」

彼女の存在はやがて伝記からも消え失せるのだろう。
正しくは、消し去るのだ。
僕の手で。

王位継承時のヴァイル失踪は、レハ様監禁EDになってるに10ペリカ。
どっちに転んでもヤンでしまう寵愛者達に、リリアノの心労を思うと居た堪れない。