そして訓練場/衣裳部屋にて(更に続いて完)|かもかてSS

想定
◎グレオニー:愛情ルート中
◎レハト:未分化/一人称僕
グレオニー視点です。

衣裳部屋にてから更に続いて、ようやく終われそうです。
終わるも何も、始めからシリーズにするつもりなんて無かったんだけどなああああ。
レハ様は乳の話題で頭がいっぱいのようです。

こちらの続きです。

同僚の目が痛い。
そんなに睨まれても、この雨は俺の所為じゃない…筈なんだけど。
やれどこそこにカビが生えただの、どれそれがカビただの、宿舎は慌しい。
ハイラに至っては、いっそグレちゃん吊ったら良いんじゃないのだの何だの言い出す始末だ。

たっぷり1週間、途切れながらも降り続いた雨はようやく上がり始め、主日は辛うじて曇天という状態になった。

どうにか持ち堪えている曇天の中、ふと訓練場の脇に見えたのはレハト様の姿。
思わず条件反射で反対方向に身を隠そうとした首根っこをフェルツに抑えられる。
……やっぱ逃げたの怒ってるよな。そうだよな……。
そのまま無言で俺の首を抑えたままレハト様の元へ進んでいる。
フェルツは有無を言わさない腕力で俺を引き摺り、ハイラが遠くからひらひら手を振るのが見えた。
楽しんでるな。お前は絶対に楽しんでる。

やがて、ペッと手が離され、俺はレハト様の前に立たされる羽目になった。
え……ええと……その……。

「元気そうで良かった」

俺が口を開くより先に、レハト様が言う。
表情を恐る恐る見るものの、普段と変わらないように見える。
しかし、何だろう。この圧迫感…。

「あ、あの……すみませんでした」

圧迫感に屈し、俺が謝罪をするときょとんとした顔をして首を傾げた。
小首を傾げた様子が可愛らしくて、少し俺の頬が緩んだ。

「胸見てたこと?」

げほっ。
うわ、人って何も無くてもむせるんだ。
て、何ですかそれ。違います、どうしてそれ、え、何で?
むせて言葉が言葉になりきらない俺を見てレハト様がほんわかと笑う。

「見てたんだよね?」

怖い。目が笑ってない。
辛うじて首を振って意思表示をするものの、レハト様の眼光は一向に緩まない。
何か初めて、寵愛者の威厳を見た気がする。
アネキウス様、超怖いです。

「あ、あの、ですね」

ようやく落ち着き始め、言葉が言葉になるようになってきた。
絶対にこれ誤解されてる。

「あの……先日訓練場にいらした時…のことでしたら、俺確かに、あの、貴族の方見てましたけど、いや見てたと言うか……。
 でも見てたのは衣裳で、そういう所じゃ……」
「キレイに胸のラインが出るって噂の衣裳を?」

レ、レハト様……。
そんなにこにこしながら俺の心が折れそうな所を抉らなくても。

「だから、その、直ぐ前でレハト様の衣裳のお話が出てらしたので、ああいうの、着られたら……すごく似合うんじゃないかって……」
「ねえグレオニー。正直に答えて欲しいんだけど」

ああ……聞いてらっしゃいますか、俺の弁明。
レハト様の表情からにこにこした笑顔が消える。
口を一文字にしめているものの、耳が少しだけ赤い。
わずかに顔を伏せた後で、何か決意をしたように俺を真っ直ぐに見据えた。

「やっぱり……大きい方が好きなの?」
「ばっ……、何仰ってるんですか!?」

思わず声が裏返った。
俺の声に一瞬訓練場の注目が集まったのに気付き、急いで声を潜める。

「え、や、あの。何でその質問が……?」

レハト様は変わらず真剣な眼差しで俺を見上げている。
どうやら俺が答えるまで、話してくれないらしい。
妙な沈黙と、じわじわ集まる視線。
いっそ殴られる方がマシかも知れない。

「……あの……俺、別に大きさとかは……その……気にしないっていうか……」
「ホント?」

僅かにレハト様の顔が明るくなったように見えて、俺は慌てて頷いた。
レハト様は一度大きく息を吐くと、うって変わったような笑顔になった。
今度はちゃんと目まで笑っていて、俺も思わず安堵の息を吐く。

「良かった。もし大きいの好きだって言われたら、僕保証出来ないから」

保証、保証って……え?
それは……え、ええと…いや、そんな嬉しい予想を立てるもんじゃない。
浮かんでは消える都合の良い想像を振り払うように首を振る。

「あ、でもね。念のためにね」

レハト様は変わらず無邪気な表情で話しかける。

「リリアノにも聞いてみたの。どうすれば良いのかなって」

げほっ。
落ち着いた筈の咽喉がまた何かにつっかえた。
リリアノ様になんつー質問をなさるんですか!?

「……すごい爆笑されたけど。目に涙まで浮かべて」

陛下に、よりによって胸のサイズの話出せるのなんて、今レハト様しか居ないんじゃないんだろうか。
と言うよりも、今後も現れない気がする。
これが寵愛者の器なんでしょうか。
俺、何かすごく今、身分不相応という言葉を噛み締めています。

明らかに引いている俺の姿を見て、レハト様が再び首を傾げた。
そして何か思いついた顔をした。
ああ、もう聞くのが怖い。

「そうそう、それで、教えてくれたよ。
 何か、成人して結婚すれば大きくなるもんなんだって」

リリアノ様ーーーーー!?
げほげほとむせる俺を見上げて、レハト様がとどめの一言を言った。

「そしたら、楽しみにしててね」

楽しみにって。楽しみにって、どういう。
それ、どういう意味の話なのか、いや、絶対に分かってないよな。
楽しみなのは確かだけど、いやいやいや、違うダメだ。ええと…。
とりあえず別の事を考えなくては。
きょ、今日の昼飯は何鍋だっけかな…?
思考すら、言葉にならずにぐるぐると駆け巡る。

目が合うと、レハト様は少しはにかむような笑みを見せた。
そして、その目線が僅かに下に行き…止まる。
え?

「グレオニー、血」

レハト様に言われて、慌てて口の辺りを手で覆う。
……指にわずかにぬるりとした感触。これは。

「鼻血出てる。ど、どうして?」

慌てて俺の顔に手を伸ばそうとしたレハト様から一気に顔を背ける。

「だ、大丈夫です!いや、あの、ホント、何でも無いです。
 あの、すいません!!」
「だって凄い出てる。拭いて拭いて」

ちょっと、今顔を近づけるの止めて貰えませんか…!
また今度、ともごもごと告げ、ばたばたとその場から走り去った。

……フェルツの呆れ顔と、ハイラが腹を抱えて笑う姿を横目に。

よし!無事に(?)鼻血出た!
今日もリタント王城は平和ですねってお話。