とばっちり編/衣裳部屋にて(更に続)|かもかてSS

想定
◎グレオニー:愛情ルート中
◎レハト:未分化/一人称僕
◎友情出演:フェルツ
まさかのフェルツ視点。
こちらの続きです。
そういえば、貴族の呼び鈴すら鳴らした事は無いのに、何で自分が此処で、しかももう一人の寵愛者様の居室前に居るのか甚だ疑問だ。
かろうじて引っ張ってきたグレオニーはソワソワとしながら声をかける。

「いや、だから……本当良いって。ほら、こんな時間だしさ…」

まだ夕刻にもならない時間だぞ。大丈夫かお前。
ともかく、こいつをレハト様の居室に放り込んだらそれで良いか。

呼び鈴を鳴らし暫くすると、中からサニャちゃんが顔を出した。
俺の顔を見て、首を傾げた。
レハト様への面会を申し出ると、しばらく待つよう伝えられる。

どうやら面会の申し出は通ったらしく、サニャちゃんが再び扉を開けた。
後はこいつを放り込んで…と振り向くと、誰も居ない。
お、おいいいい!!
あの僅かな時間で逃げられたのか。どうしてこういう時だけ俊敏なんだ。
しかし…ここで立ち去るわけにも行かず、仕方なくレハト様へ向き直り礼をする。

「えーと……申し訳ありません。つい先刻まではグレオニーが居たんですが…」

俺の後ろに目をやったレハト様が、呆れた顔で溜息を吐いた。
……ああ、俺も多分同じ気持ちです。
すぐに去る予定だったものの、肝心の本体が居なくなってしまっては…。
立ち位置を迷っていたような姿を気にかけてか、サニャちゃんが椅子を勧めてくれる。
しかし客人の扱いを受ける訳にもいかない。
やんわりと断ると、今度はレハト様本人から勧められてしまった。
さすがに断るのは失礼にあたるだろうか、と浅く腰掛ける。

「どうせハイラが何か言って、押し付けられたんでしょ?ごめんね煩わせちゃって」

折角だからお茶でも、という言葉とサニャちゃんの後押しで結局お茶までご馳走になる羽目になっている。
茶器を恐る恐る持つ俺にレハト様が笑いかけた。

「居るのは僕だけだし、気にしないで」

見れば怒っている雰囲気など微塵も無い。
むしろ、人懐っこい印象すら持つ。
茶を啜る俺に、この菓子がどうのこうのと言いながら次々手に握らせる。
レハト様自身も一つ二つ頬張り、嬉しそうな表情を浮かべた。

外は未だ止まない雨。
雨音はさらさらと遠くから聞こえ、一時よりは随分穏やかだ。
本当に、翌日は酷かった。
捌けきらない水が詰所まで染みてきた時は、雨男の本領発揮に戦慄すら覚えたものだ。

しばし沈黙の中、茶器が擦れる音ばかりがわずかに響く。
まるでここだけ切り抜かれたように穏やかな……

「フェルツ、男の人はやっぱり胸大きい方が好きなの?」

唐突な問いに、思わず口に含んでいた茶を吹くところだった。
少し離れた場所でサニャちゃんが豪快に洗濯物を落としたのが見えた。
俺に構わず、レハト様が矢継ぎ早に話しかけてくる。

「ローニカに聞いたら笑ってはぐらかされて、でもヴァイルは未分化だから分からないでしょ?
 で、タナッセに聞いたら、すごい勢いで怒られた」

それは怒るだろう。あの王息殿下は。

「ハイラはハイラで、小さいのは希少価値だなんだ言ってたけど」

よし、戻ったら殴ろう。
それで、とレハト様が俺に向き合う。
物凄く真剣な眼差しに、少し怯みそうになる。

「僕、大きくなると思う?」

今度こそ茶を吹いた。
真剣な表情で何を言い出すのかと思えば、とついつい肩が震える。

「いえ……あの、それは……何とも……」
「もーー!真剣なのにーっ」

俺が必死で笑いを堪えているのを見て、レハト様が高い声で不満を上げた。
両手でテーブルをペシペシ叩く姿は、微笑ましくすらある。
レハト様はむくれて両手でカップを持ってぐびぐびと茶を飲んだ。

「大丈夫ですよ、グレオニーなら尚更、気にしてませんよ」

今度はグレオニーの名前に過剰反応したのか、頬が一気に赤くなった。
……これは、ハイラがからかいたくなるのも、少しばかり理解出来る。

大きくなるのか否か、グレオニーの好みはどうなのだなど、俺は退室の機会を掴みそこねたまま、すっかり外は日暮れの様相。
レハト様が夕食の時間となり、ようやく俺は解放された。

「今日ありがとね。次の主日は、訓練場行く」

部屋から出る直前に、レハト様が俺のマントを引っ張って言う。

「それで、直接、グレオニーに大きいのが好きか聞く」

そ、それは止める方が!
伝える間もなく、レハト様は部屋に戻ってしまった。
……次に降るのは、さて、雨か。グレオニーの鼻血か。

愛情ルートに持ち込もうと思ったのに。フェルツさん回避しすぎ。。