衣裳部屋にて|かもかてSS

想定
◎グレオニー:愛情ルート
レハト:未分化/一人称僕
レハト視点。 嫉妬癖が抜けない!
ヴァイルが衣裳部屋を嫌う理由が少なからず分かってきた。
舞踏会衣裳を合わせにやってきていた筈が、
いつの間にか衣裳を新調する話になり、
いつの間にか今日中に採寸を終わらせる話になり、
そして衣裳係3人に囲まれて…既に逃げる隙間も無くなっていた。「いやいやいや、実際誰が作れるかなーって話はしてたんですよ」
「ヴァイル様はあの調子で新調より繕いの方が多いですし」
「ユリリエ様のお衣裳は流石にお綺麗ですけど、やはり偏りますしね」
「ああ…この寸法の新鮮さ…」
「まー、ちょっと見てこれ、肩幅の小ささったら!」
「きゃー、やだわー。腕なんて私の手首くらいなんじゃありませんの?」頭一つ半はゆうに違う衣裳係達は僕を囲んで、スゴい勢いで採寸なのか観察なのか分からないようなことをしてる。
腕を上げろだの上を向けだの足をここに乗せてみろだの、もう何が何だか分からない。
その度に頭の上からワーキャー声が降ってきた。
…こういう状況、どこかで見たことがある。
そうだ…数人がかりで洗われてる兎鹿…。

変わらずワーキャー頭の上から声が振る中、別の声が扉の方からした。
向けば、ここで見るのは珍しいグレオニーの姿。
鎧を外し、上着を手に持っているようだ。

「あれ、レハト様?」

数人に囲まれている僕を見て、…多分、僕と同じ様な事を思い出したのだろう。
少し吹き出し、直ぐに咳払いでごまかした。

「あ、取り込み中申し訳ないんだけど、上着を引っ掛けてしまって」
「ちょっと持ってきて」

衣裳係の一人がグレオニーを手招きする。

「ドコ?」
「ええと…この辺りだったかな」

衣裳係はグレオニーの指差す所を見付けると、手首に巻いていた小さな針山から針を抜き、さらさらと縫い合わせ出した。
こっちは忙しいんだから、と言わんばかりの早さだ。
…まだまだ解放して貰えないらしい。
僕の無言の訴えかけに気付いてくれたのか、追い出されかけたグレオニーが衣裳係に話しかける。

「衣裳合わせ…じゃないか、採寸?」
「そーですよ。レハト様、背が伸びられたので、良い機会とね」

背が伸びた、と聞いてグレオニーが僕の頭の辺りをまじまじと見る。
そして首を傾げた。
の、伸びたんだよ!グレオニーがでかいんだよ!
少しばかりグレオニーを睨みつけると、慌てた様子で付け足した。

「いや、成長期ですものね?伸びました。伸びてます」

大袈裟に頷いてみせる姿を見て、多少溜飲が下がった。
おおまかな採寸は終わったらしく、やっと解放されるかと思ったものの、今度は様々な色の織物や布が僕の目の前に差し出された。
一つ一つの色に加えて、上等なものなのだろう。
細かい刺繍が加えられた布達は、更に複雑な色を混ぜ合わせる。

「さ、どんな感じにしましょうか?
レハト様はどういうのが好きですか?」

ど、どんな感じって言われても…。…ええと…、動きやすい感じ…?
ぽつりと呟いたら衣裳係にあっさりと否定された。

「それなら普段着で充分です。舞踏会衣裳なんですから!
何か無いんですか。こう、可愛い感じー、とか、華やかな感じー、とか」

…何かキラキラひらひらしたのを作りたいだけなんじゃないだろうか。
必死で考えている僕の隣で、我関せずと、悠々と眺めていたグレオニーが目に入る。
その姿が何となく癪だったので、僕はグレオニーに話題を流す。

「え、え?」

グレオニーが驚いた様子で僕を見返した。
僕はもう一度、グレオニーの見立てを聞く。

「お、俺の見立てですか?いや、でも別に俺のなんて聞いても…」

僕が上着を引っ張ると、観念したのか真剣な表情で悩みだした。
視線が僕の頭先から足先まで何度も行ったり来たりをして…正直こそばゆい。
しばしの沈黙の後で、グレオニーがぽつぽつと呟きだした。

「…や、ホント参考になんてならないと思うんですけど…」

衣裳係が肘で小突いた。

「あ、あの。レハト様いつも動きやすそうなお召し物なので…、
たまには華やかな感じも良いんじゃないかなって…」

それで?と衣裳係が促す。

「ええと、この間見掛けたんですけど、こう、少し高い位置で、何て言うのかなあれ。絞ってあるような?」
「ああ、最近流行りだしてる。縫い返しを高めにするとね、ほら、胸のラインが綺麗に見えるってさ」

…グレオニー?お前は誰の何を見てたんだ?

「そうそう、そんな感じで、ふわっとしてるようなのが可愛いかなって」
「ふーん。だそうですよ、レハト様」

……グレオニー。
期待してるような目で見るのは止めて欲しいな。
話を振ったのは僕だけど、残念ながら僕には綺麗に見せたい胸のラインは無いんだよ…?
僕の口から僅かに溜息が漏れた。

「や、だから本当に俺のなんて参考に…」

もごもごと俯く彼の言葉はまだ続いていた。

「レハト様は、何着てらしても…綺麗だと、思いますし…」

小さな呟きは、衣裳係達に聞こえたらしい。
目を輝かせた衣裳係達に、グレオニーが慌てて首を振った。
顔がみるみる赤くなっていく。

「え…あ、そういう意味じゃなくて!そういうって、違う…ええと、あの、だから…」

あわあわと繰り返すが、衣裳係達の目の輝きは増す一方だ。

「す、すみません、俺訓練あるんで!」

目線に耐えられなくなったのか、グレオニーは勢い良く一礼をすると衣裳部屋をばたばたと逃げ出してしまった。
彼の後姿が見えなくなった辺りで、衣裳係達がぐるりと僕を振り返った。
目が怖い。

「なになに今の!どうなんですの!実際のところ!!」

持ってきていた布類を横へ押しやり、衣裳係達が僕に詰め寄る。
採寸は…?と僅かに呟いた抵抗の声すら聞こえない様子で、
僕は結局、ローニカが探しに来てくれるまで衣裳部屋に軟禁される羽目になった。

****

おまけ。

訓練場でグレオニーを見かけたので、手を振りかけて僕は動きを止めた。
グレオニーの目線の先には…
高め縫い返しで、そう胸のラインを綺麗に見せると言う噂の衣服に身を包んだ貴族の姿。

…ああ、何だろう、この気持ち。
すごい勢いで底冷えしていくのを感じる。

ふと目線を返し、僕に気付いたらしい。
笑顔で僕に手を振るグレオニーから目線を思い切り外し、隅でニヤニヤしていたハイラを呼んだ。

とりあえず、今日は一緒に訓練してくれないかな。
グレオニー?
綺麗なラインの胸でも見てれば良いんじゃないの。
うるさいな。貧乳はステータスって何の話。このまま斬るよ。

中の人のグレオニー像は 顔≧乳 。
大丈夫だよレハ様。貧乳は希少価値だ、ステータスだ。