恵みの雨(レハトver)|かもかてSS

想定
◎グレオニー:護衛ルート中
◎レハト:一人称僕/未分化
レハト視点です。
護衛に就任してからのグレオニーは、一気に忙しくなったようだ。僕が思っていた以上に、護衛という職位は色々と厳しいらしい。
単純な腕っぷしだけではなく、立ち振る舞いから
この国の歴史・法律に至るまで、まるで貴族並の知識を求められる。僕が成人したら、公式な護衛の任命式がある。
ある程度は僕の要求も通るかも知れない。
でも、そうして彼を護衛に推したところで彼が素直に頷いてくれるとは思えない。
結局今の僕に出来るのは、出来るだけ邪魔をせず、彼を応援する事だけだ。借りた本を返しに行った図書室でモゼーラから勉学に勤しむ姿を聞く。
どうやら今は訓練よりも勉学に傾いているようだ。
僕の借りていた本がちょうど範囲である事を知り、
直接彼に渡して良いか聞くと快く受け入れてくれた。
この本なら、僕も勉強をしたばかりだ。
少しくらいなら、彼の手助けを出来るかも知れない。僕は本を持ち、早速彼の部屋へ赴いた。

ノックをするが返事が無い。
そっと中を覗きこむと、机に突っ伏したまま寝ている姿が見えた。
穏やかに背中が上下している。
本だけ置いて戻った方が良さそうだ。

机の隅に本を置いた振動でグレオニーの頭がわずかに上がる。
寝ぼけたまま僕の姿を認めると、途端にとろけそうな笑顔を見せた。
今まで見たことない笑顔だ。

「グレオニー、本ここに」

言いかけた僕の腕が掴まれた瞬間、
僕の体はすっぽりとグレオニーの腕の中に収まっていた。
ぎゅうと抱き締められたまま身動きが取れない。

グレオニーは部屋着で、つまり、薄着で、抱き締められると、体温がすごく伝わる。
それに、やはり鍛えているんだろう。
彼の胸は厚く、安心できる弾力がある。
僕の腰に回された腕の力はまだ緩まない。
…なんとなく心地良くて、そのまま彼の胸に顔を埋める。
グレオニーの匂いだ。

……。

あー……何か僕も眠くなってきた気がする。
だってすごい温かいし、背中に誰かの手があるって安心する。
ちょっと僕もうとうとしてきた辺りで、急にグレオニーの体が強張った。
と思った瞬間、体が引き剥がされる。

グレオニーの顔を見るとみるみる赤くなっていった。

「れ、レハト様っ!?え、あ、本物!?
ちょ、え、すみません、俺寝ぼけてて…!!」

……そんなに急いで手を離されると、何だか逆に寂しい気がする。

「すみませんすみません!!
な、何か…すごい良い匂いするなって思ったんですが…あ、いや、何言ってんですかね」

寝癖の残る短い髪をかく。
あ、横、まだ跳ねてるんだけど。
僕が手を伸ばすと、物凄い反応速度で飛び退いた。
反動で椅子が転がる。

……。

……さすがに、ちょっと傷付いた。

僕の表情に気付いたのか、グレオニーが更に平謝りを続ける。
僕は無言で、もう一度椅子に座るように促す。
困った表情を浮かべながら、グレオニーは大人しく椅子に座った。
座ってると目線がちょうど同じ位だ。

僕は手を伸ばして、はねていたグレオニーの髪をねかせる。
短かくて、少しだけ硬い髪の毛だ。
グレオニーは緊張した面持ちで、少し俯きながらも大人しくしている。
…手は、別に膝にそろえなくても良いんだけど。

護衛になって、いつも僕の傍に居てくれた筈なのに、
僕は彼の匂いを知るのも、髪の硬さを知るのも、初めてだ。

「……あの、レハト様?」

いつまでも髪を撫でている僕に、グレオニーがおずおずと声をかける。
髪を撫でてた手を、グレオニーの頬にあてた。
びくり、としたものの、先刻の事があってか今度は逃げない。

そのまま静止していた僕の手に、グレオニーの手が重なる。
今度は僕がびくりとした。

「……何か、あったんですか?」
心配そうに僕の手を握るとゆっくりと降ろし、両手で包み込んだ。

「何かあったなら……いや、話してくれなんて言うつもり無いですけど、
でも、お力になりたいって、いつも思ってますから。
俺、その為に、貴方のお傍に居るんです」

そう言って、柔らかく笑う。
こういう時に、変に真っ正直な所を見せるのは、もう、卑怯だと思う。
グレオニーは僕の言葉を待つように、正面から見据えてくる。
あ、だめだ。何か急に恥ずかしくなってきた。
僕は首を振ると、グレオニーの両手からそっと自分の手を抜いた。
…どうして、そんな残念そうな顔をするんだろう。
もう、本当に卑怯だ。

僕は本を置いた事を小さい声で呟き、急いで部屋を後にしてしまった。

早晩、それも早いうちに僕は性別を決め、
そしてこれからの人生をも、決めなければならない。
その時に、彼と一緒に居られる道はどれ位あるんだろう。
今まで何度も自分に問うてきた。
でも今までよりもはっきりと分かるのは、
多分、僕は、彼の髪の硬さや彼の優しい匂いを知れる道じゃないとダメなんだ。

思わず、彼の部屋に続く廊下を振り返る。
窓から注ぐ光は明るく、その道を照らし…てないよ。
……何か、暗雲たちこめてるっぽいんですけど。
雨。
これは良い兆候なのかな。

アネキウス様、どうか僕にその道を、
出来れば、この雨が、その答えでありますように。

ヘタレオニーが時折見せる漢ラシオニーの姿に中の人がキュンキュンしてます。